DOCTOR INTERVIEW

医師が薦めるメディカルハーブセラピー

  • 緑蔭診療所 医師 橋口玲子 先生

1954年鹿児島市生まれ。東邦大学医学部卒。
東邦大学医学部客員講師、および薬学部非常勤講師、国際協力事業団専門家を経て、1994年より緑蔭診療所で現代医学と漢方を併用した診療を行っている。
循環器専門医、小児科専門医、認定内科医、認定産業医、医学博士。 高血圧、脂質異常症、糖尿病、アレルギー性疾患、および心身症などの診療のほか、ハーブ療法やアロマセラピーを用いたセルフケアの講演、執筆活動も行っている。
『医師が教えるアロマ&ハーブセラピー(』マイナビ)『専門医が教える体にやさしい ハーブ生活(』幻冬舎)『補完・代替医療ハーブ療法(』金芳堂)『世界一やさしい野菜 薬膳食材事典』(マイナビ)などの著書、監修書がある。

INTERVIEW 01 学の発展がめざましい現代に、あえてメディカルハーブセラピーが再注目されているのはなぜでしょうか?

メディカルハーブティーを日常に取り入れることで手軽に抗酸化力を高めることができます

医学が発展し治療可能な病気が広がったとしても、寿命の延びた現代では老化による心身の衰えとより長く向き合っていかなくてはなりません。また、現代社会は情報に追われる、睡眠不足、安定した人間関係が保ちにくいなど、社会心理学的なストレスが増えています。

加齢やストレスによって体内では酸化反応が進み、老化、動脈硬化、がん化などにつながっていきます。ヒトの体内にはもともと抗酸化システムが備わっていますが、それでは追いつかず徐々に衰えていきます。

メディカルハーブ=抗酸化作用の高い植物なので、メディカルハーブティーを日常に取り入れることで手軽に抗酸化力を高めることができます。また、メディカルハーブは芳香や爽やかな風味を持つものが多く、嗅覚や味覚を通して脳に働きかけ、精神的ストレスの緩和に役立つという利点も備えています。メディカルハーブティーは現代の滋養強壮のキーワード「抗酸化・抗ストレス」を支える強い味方です。

INTERVIEW 02 「メディカルハーブティーは体に良い」というのは有名ですが、具体的にメディカルハーブティーはどのように体に良いのでしょうか?

嗅覚によるリラックス効果から抗炎症まで幅広い効能があります。

ハーブにお湯を注ぐと芳香が立ちのぼります。これは湯気の中に揮発性の精油成分が含まれているからです。ハーブティーをいれたらまず香りを嗅いでください。嗅覚を通してリラックス反応やリフレッシュ反応を引き出すことも可能です。緊張しやすい、気になることがあると眠れない、朝の気だるさがとれにくいなどのセルフケアに役立つメディカルハーブティーもあります。

ティーの中に溶け出す有効成分はハーブによって様々ですが、フラボノイドやアントシアニン、ポリフェノール、ビタミンC、精油成分の一部などが胃腸から吸収されます。抗酸化成分の豊富なハーブティーを毎日続けて飲むことは動脈硬化、脂質の酸化の抑制や、しわ、しみなど皮膚の加齢変化の予防につながります。慢性的な胃もたれ、食欲不振などのセルフケアに役立つメディカルハーブティーもあります。

また、抗炎症、抗ウィルス作用のあるメディカルハーブティーは風邪のひき始めのセルフケアにも大活躍します。症状を緩和するだけの総合感冒薬や栄養ドリンクに頼るより、メディカルハーブティーのほうが合理的で体に役立つ手当といえるでしょう。

INTERVIEW 03 ノンカフェイン生活は何が良いのでしょうか?

カフェインの過剰摂取による、気だるさやイライラを追い払ってくれます。

カフェインは疲労を感知する脳の機能をブロックし睡眠中枢を抑制する薬物です。毎日カフェインを摂取しているとカフェインの効果が切れるとだるい、眠い、イライラ、頭痛などの禁断症状が起こることがあります。コーヒー、紅茶などのカフェイン飲料以外にもチョコレート、栄養ドリンクなどにもカフェインが含まれています。疲労をカフェインでごまかし続けていると、疲労の蓄積だけでなく、慢性的な頭痛や気分の波が大きいなどの悪影響を引き起こしかねません。

紅茶や緑茶もハーブとブレンドして楽しむことはあり、南米原産のマテ茶も少量のカフェインを含んでいますが、これら以外のハーブティーはノンカフェインです。しかし、ノンカフェインであっても頭がすっきりするリフレッシュ効果を引き出すことはできます。例えば、ペパーミントとレモングラスのブレンドティーは、それぞれの精油成分であるメントールとシトラールの爽やかな芳香と風味で気だるさやイライラを追い払ってくれ、さらに吐き気、胃もたれ、食欲不振、消化不良などにもよいというプラス効果が得られます。

INTERVIEW 04 ハーブ療法、アロマセラピー、漢方、西洋医学などを組み合わせた医療を実践されていますが、ハーブティーを取り入れる良さとは何ですか?

メディカルハーブティーは継続的に抗酸化成分を摂る手段として優れています。

現代医学や漢方はそれぞれに診断・治療体系をもった医学ですので、治療の必要なレベルの不調においてはこれらが優先するのは当然です。しかし、治療を終了してその後もよい健康状態を保つためや、そもそも不調に陥らないためには治療よりセルフケアが重要です。ヒトは食べたものからできているので、体を作り動かす栄養素に加えて抗酸化成分の豊富な食物を摂っていることは老化や病気の予防に大切です。メディカルハーブティーは継続的に抗酸化成分を摂る手段として優れています。

また、メディカルハーブは風邪をひきやすい、胃腸が弱いなど自分の体質的な弱点を支えてくれる有効成分を豊富に含んでいながら、薬や濃縮サプリメントのように摂り過ぎによる害を心配する必要がありません。メディカルハーブティーは誰でも簡単に実践できる、安心で手軽な手段としてもっともセルフケアに向いていると考えているので、患者さんに紹介することも多いです。

アロマセラピーも香りの脳への効果や経皮吸収による効果をセルフケアに利用する良い方法ですが、精油は極めて濃厚な物質なので希釈法の知識や道具類が必要になります。メディカルハーブティーの香りを嗅ぐことでもアロマセラピー効果の一部は得られるので、まずはハーブティーをお勧めしています。

ところで、「ハーブティーはどこで手に入れたらよいですか」という質問をよく受けます。紙のティーバッグにはいったものをよく見かけますが、ハーブが粉砕されて揮発成分が飛びやすく、酸化もしやすい保存法なのであまりお勧めできません。ハーブが粗く砕かれた形で酸化しにくいパッケージに入っているものがよいでしょう。

自分でハーブを栽培している方もいますが、ハーブが周辺から農薬等に汚染されないようにすることや収穫後の乾燥保存を上手に行うなど案外大変です。ヨーロッパでは古くからメディカルハーブティーを治療やセルフケアに利用してきました。特にドイツでは医師や薬剤師がメディカルハーブティーを処方することもあり、メディカルハーブの有効性や安全性の評価にも基準が確立されています。安心でおいしいメディカルハーブティーが日本でも容易に手に入るようになることを願っています。

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